☆制作スタッフインタビュー


サウンドをご担当いただいた松宮 豊氏へのインタビューです。
オフィシャルWEB初出しです。

【質問】「王宮夜想曲」の楽曲を制作されるに当たって気をつけられた点は?
今回は劇中のBGMの譜面を私が書き、金子先生に指揮棒を振って頂いたような形ですが、演奏がどんなに素晴らしくても、元の曲がへたれではどうしようもありませんので、時代設定が中世ヨーロッパであるということから、「クラシックっぽい曲」ではなく、本当にクラシックとして作るよう、努力しました。そのために、普段はほこりをかぶっている古典の楽典の本を引っ張り出したり、コンサートに足を運んだりして、いろいろと研究しました。中でも、「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」という、クラシックの大イベントは、とても参考になりました。また、音楽書以外にも錬金術や発達心理学に関する文献がとても役に立ちました。そういう意味で、ものすごく勉強をさせて頂いたお仕事だと感謝しております。

全体としては、各曲に個性がありながらも、通して聞いて頂くと、ひとつの組曲として成立するように、流れを重視したつもりです。とは言え、OPとEDは、金子先生の曲が引き締めて下ったので、BGMは割とやりたい放題やらせて頂いてしまったかも知れませんね。

特定の場面の1〜2曲を除いて、ドラムセットが使えませんので、曲によってはリズム感を出すのに苦労しましたね。これは、クラシックを書く上での永遠のテーマです。

【質問】各キャラクターごとの苦労した点、こだわった点などを教えて下さい。
*カイン
カインはメインキャラと言うことで、他のキャラよりも多くのテーマ曲のご注文を頂きました。
主なものは、自分のあるべき姿を模索している成長期と、アイデンティティを確立して以後の、数曲のヴァリエーションです。そこで、まずは成長期の少年にありがちな、心の迷いや危うさを強調したテーマ曲を作り、そこからどのようにして各々のパーソナリティを確立しえたか、と言う点に注意して、編曲を重ねていきました。これらをひとまとめにして、「カインの主題による変奏曲」として聞いて頂けると、うれしく思います。


*ジーク
秘密をひとりで抱える苦しみや、そこはかとない謎めいた雰囲気を、低音域をゆったり流れるメロディで表現しました。教え子であった本物のカインの死とか、あるいはそれが原因で自分が作り出した、偽りのカインが王子になったこととか、ジークの複雑な思いは、心の奥底に秘められているのであります。


*エドガー
エドガーは一見、ちょっと嫌な奴そうな御仁ですが、あえてその雰囲気は抑えて、王族的な豪胆さとか意志の強さを前面に出してみました。かといって、実際にはあまりお近づきにはなりたくないお方ですが・・・。金管楽器の力強さが、彼の強靭な魂の象徴です。


*リオウ
東方出身らしいと言うことで、他のキャラの皆さんとは一線を画した、エキゾチックなムードを出すのに苦労しました。リオウには複雑な事情があるようで、割りと性格がつかみ辛く、なかなか主題メロディを決めかねたのですが、手間のかかった分、最終的には良い友達として理解し合えたような気がします。


*アストラッド
神官と言うと、ストイックな感じがしますがが、アストラッドの場合は、外見からあふれ出る朗らかな包容力と、おっとりしたイメージを基調に作りました。通常のBGMでは数少ない、ピアノの入った曲ですが、これによって彼の持つ優雅さを強調してみました。


*ヴィンセント
騎士団長としての勇ましさよりも、ヴィンセントの持つ寡黙さや真面目さ、あるいは心に抱える苦悩みたいなものにスポットを当ててみました。それだけに懐の深い面もあるのだろうと思いまして、その辺りも伝わるような感じにしました。


*ロデル
正直申しますと、一番イメージが湧きやすかったキャラはロデルです。
王子を呼び捨てにしてしまうような、無邪気な少年ぽさが小気味良いですね。
そういう訳で、最初から最後まで、コミカルな曲調で押し切ってみました。
彼の持つ、小動物のような元気のよさを感じていただければと思います。

【質問】一番印象に残った、または思い出深かった曲とそのエピソードをお願いします。
カインの戴冠式のBGMです。
場面ごとの雰囲気を重視するため、他のBGMの楽器構成は、極力小〜中編成に限定して曲を書いたのですが、このシーンはカインの一世一代の晴れ舞台と言うことで、唯一フルオーケストラ編成で書きました。本当にカインから「余の戴冠式に演奏される曲を書いてはくれぬか?」と、依頼されたような気持ちになって、しょっぱい曲を書いたら打ち首獄門になる覚悟でがんばりました。その甲斐あって、ローデンクランツの皆さんも喜んでくださったようで、何よりです。
「カイン国王ばんざーい!」
この曲をアレンジして、構成しなおしたものを戴冠式のアニメパートで使って頂きましたが、いつか自分で指揮棒を振って、演奏してみたいものです。
夢のまた夢ですが。

松宮さん、ありがとうございました。